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更新日:2017年7月24日

「週刊東洋経済」2009年3月14日号

「週刊東洋経済」3月14日号に掲載された、茨城県知事のインタビュー記事です。

磨き続けてきた魅力をさらに輝かせる熱意と工夫

地図を見れば、茨城県の客観的な優位性は一目瞭然だろう。
地理的なアドバンテージゆえに国レベルでの産業集積が進められてきたことがわかる。
鹿島港を中心とする巨大なコンビナート群しかり、筑波研究学園都市しかりだ。
が、地理的優位性だけでは、ナンバーワンの理由を説明することにはならない。それは所与のものとして、産業エリアとしての魅力を磨き続けている茨城県の姿勢そのものが強い引力になっているのではないだろうか。
知事のリーダーシップのもとで繰り広げられる多彩な施策と工夫も、ナンバーワンの座に君臨し続ける要素だと言えるだろう。
景気が急速に悪化したにもかかわらず、年明け早々日野自動車新工場や東京ガスLNG基地新設、茨城空港の国際線就航といったビッグニュースは、原石を磨き続けてきた賜物と理解できる。

(制作洋経済広告局企画制作部)

2010年茨城県の地図が変わる

橋本昌知事は指摘する。「過去10年間の工場立地面積はダントツのトップ。2006年の工場立地面積は県外企業の立地件数とともに全国1位。2007年、2008年もトップクラスです。が、本県が活力を維持し、発展していくためには、日本をリードする競争力あふれる産業大県づくりをさらに推進する必要があります」。
事実、「産業大県」への動きは目を見張るほどだ。2008年12月、東海村で世界最高水準を誇る大強度陽子加速器J-PARCが稼働した。「水素・リチウムの燃料電池開発や新薬の創製などに取り組んでいます」と橋本知事は産業利用に期待する。今後、新たな製品開発への活用が加速することだろう。
産業インフラの要である高速道路ネットワークに目を向けると、東京という巨大マーケットとつながる常磐道や東関道に北関東自動車道や首都圏中央連絡自動車道の横軸が加わり、県内外の産業拠点が有機的に繋がっている。「2012年度には首都圏中央連絡自動車道が東北道、常磐道、東関道に接続するなど、これまで注力してきた高速道路ネットワークのインフラ整備が完成段階を迎え、茨城県の企業環境も飛躍的に向上します」と橋本知事。県央を横断する北関東自動車道は2008年12月に東北自動車道と常陸那珂港を直結。水戸・日立エリアと北関東、東北エリアとのスムーズなアクセスが確保される。そして、東関道水戸線は茨城空港へつながる。
2010年3月開港の茨城空港では、ターミナルビルの徹底したローコスト化が、搭乗時間の短縮にも貢献。百里基地の転用というそもそもの生い立ちが空港利用料のコストダウンを可能にし、ローコストキャリアをはじめとする国際線誘致にも力が入る。すでにアシアナ航空がソウル便就航を発表。海外旅行の新たしいカタチが茨城から始まるかもしれない。茨城県に臨空エリアという新たなアドバンテージが加わることとなる。
鉄道も例外ではない。東京の秋葉原と筑波研究学園都市を45分でつなぐ『つくばエクスプレス』も住宅、産業用地としての可能性を浮き彫りにした。大規模商業施設のオープンなど、『つくばエクスプレス』を軸とした新しい街づくりも軌道に乗りつつある。常磐線の東京駅延伸も新たな起爆剤になるだろう。

巨大マーケットへの海の玄関口として港も、変わる。

北海道や北九州とのRORO定期船が就航し、欧州の大手自動車メーカーが輸入基地に据える日立港、建設機械の両雄、コマツと日立建機が新たに工場を立地した国際港湾の常陸那珂港、そして首都圏におけるフェリーの玄関口である大洗港の三つを一体化し、茨城港として生まれ変わる。重要港湾の統合は、全国初の試み。「前例にとらわれない決断によって、世界に向けて茨城港の認知度と利用価値とを向上させるとともに、有効かつ柔軟なリソースの配分を可能にします」と橋本知事。茨城県では、これまでも知事直轄の産業立地推進東京本部が航路誘致のポートセールスも担ってきたが、統合によって県内の産業拠点と海上輸送とをシームレスに設計したい企業ニーズへの幅広い対応を可能にするはずだ。高速道路ネットワークとのアクセスによって、北米航路と首都東京とをつなぐ結節点としての機能も注目を集めるだろう。ことほど左様に、陸、空、海と、地理的優位性に磨きをかけるスピードは緩まることがない。

コスト競争力を向上させるプライシング

アクセスが進化する一方、コスト競争力を高める施策も充実している。「茨城県の工業地地価は、埼玉、千葉、神奈川などに比べ廉価ですが、さらに法人事業税や不動産取得税の課税免除、工業用水料金の軽減などの優遇措置が進出企業の競争力向上に寄与するでしょう」と橋本知事。
また、平坦な地形が実に多彩な工業団地を揃える。東京へのアクセスを担保したいのか、広大な土地を確保したいのか、臨海か臨空か、北関東や東北を視野に入れるのか、研究開発型か、関連する産業集積を重視するのか、などなど。多彩なバリエーションが、多様な企業ニーズに対応している。

知事直轄の産業立地チームだからできること

用地の多彩なバリエーションを、どのようなソリューションにつなげるのか。茨城県では知事直轄のチームが窓口になっている。企業誘致に成功の方程式などない。相手の懐に飛び込み、一つひとつの声に耳を澄まし、信頼関係を構築する。企業が要望する絶対条件が浮き彫りになったら、それを実現するために行政としてやれるだけのことはする。真摯に、粘り強く、目の前の工業用地をピカピカの商品に仕上げるために、縦割りの壁を乗り越えた直轄チームを組織した。橋本知事は強調する。「こうした組織は茨城県のほかにはないのではないか。何よりも、私自身先頭に立って行動します。海外だろうとどこだろうと、何回でもセールスに足を運びます」。こうしてたどりついた誘致ナンバーワンの実績は、どんどんと県内の産業集積を厚くすることを意味する。

厚い産業集積が新たな立地を誘引する

日立エリア、鹿島エリア、つくばエリアに限らず、過去の進出企業が成長を果たし、新たな進出を呼び込むというプラスの経済循環も現実のものとなっているようだ。そう、茨城県に居を構える企業をサポートすることは、そのまま茨城県の魅力を磨くことと同義となる。「すでに立地をしていただいた企業への『御用聞き』も重要です。毎年120社あまりを訪問し、対話を積み重ねています。」と橋本知事。こうした対話の中から、県外から進出した新たな進出企業に対し、採用を支援する説明会開催を制度化するなど、新たに生まれた取り組みも少なくない。進出する企業にとっても茨城県にとっても、立地がゴールではない。地道な仕事に真摯に取り組む姿勢も茨城県の真髄だと言える。

日野自動車が茨城県を選んだ理由

古河市への生産拠点新設を表明した日野自動車も橋本知事のトップセールスをはじめとする茨城県の熱意が功を奏した結果と受け取れる。「関連企業や港などへのアクセスも評価いただきましたし、都心まで50キロメートルと近いにもかかわらず地価が廉価であること、教育機関や医療施設などの住環境も大きなポイントになったと自負しています。また、工業用地周辺の豊かな自然も次世代の自動車生産基地に相応しい環境を提供しています」と橋本知事。古河市、そして茨城の描く未来像に共鳴したからこそ、この時期での決断にいたったのであろう。
日野自動車に限らず、大きな決断を促す魅力が、ここ茨城県にはある。

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