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更新日:2016年5月19日

コナラの組織培養による種苗生産に関する研究

研究報告No.19-1(要旨)

研究では、シイタケ原木として重要なコナラのクローン増殖に組織培養の手法を応用することを目的として、無菌実生苗及び成木の玉切り丸太からの増殖法について培養条件を明らかにした。まず、無菌的に発芽させた芽生えから効率的に上胚軸を育成し、得られた上胚軸片からシュートを形成し、幼植物体を再生した。次に、成木の樹幹を玉切りして温室内に水さしすることにより、萌芽枝の発生に適した伐倒時期とそれら萌芽枝腋芽培養の適期を明らかにした。さらに、腋芽から効率的にシュートを形成させ、幼植物体を得るための培養条件を明らかにした。また、それぞれの材料から得られた幼植物体を順化し、コナラを種苗として野外に成育させることが可能であることを示した。

1.無菌実生苗の上胚軸片からの増殖

コナラの種子をBAP、GA3を添加したM・MDA培地で培養することにより、効率的に上胚軸を得ることができた。また、これらの上胚軸片の腋芽をBAP、NAAを添加したDKW、またはM・VSV培地で培養することによりシュートを形成し、増殖することができた。最もシュートの形成に適した培地はM・VSV培地にBAP 0.4ミリグラム/l、NAA0.5ミリグラム/l添加した培地で外植体当り5本のシュートを得ることができた。成長したシュートの発根にはIBA0.3ミリグラム/l、NAA0.1ミリグラム/l添加した1月2日BTM培地が最も適していた。

2.成木の玉切り丸太の萌芽枝からの増殖

(1)玉切りした丸太を温室内に水差しすることによりほぼ周年を通じて萌芽枝を得られることが可能となった。萌芽枝の発生量は成長休止期が多く、組織も充実していた。得られた萌芽枝の腋芽の培養では同じく成長休止期からのものが雑菌による汚染が少なく、またシュート形成率が高かった。雑菌類による汚染率が高い夏期の外植体の殺菌には硝酸銀による萌芽枝内の殺菌とペンレート水和剤の併用が有効であった。

(2)腋芽からのシュートの形成にはWPM培地が最も適しており、M・VSV、M・SGM培地も実用的な培地であった。シュートの形成に適したpHは5.6が適当であると判断した。シュート形成に適したサイトカイニンの種類はBAPが2ip、ゼアチンよりも適しており、そのBAP濃度は0.2~0.4ミリグラムと判断した。

(3)シュート形成に適した糖類の種類と濃度を調査したところ、ショ糖または果糖が効果があり、ショ糖の濃度は20~50g/lが適当であった。

(4)シュートの形成の効果をBAP0.5ミリグラム/lを添加したWPM培地NAA0.01、0.025、0、0.05ミリグラム/lまたはGA30.01、0.025ミリグラム/lを添加した6種類の培地で培養したところ、個体間により影響が異なった。その効果は腋芽の発生には有効であったが、シュートの形成についてははっきりした結論は得られなかった。アグリミネラの培地への添加、外植体の切り口を0.05%硝酸銀水溶液で6分間浸漬処理する方法はシュート、腋芽の形成に効果が認められた。

(5)シュートの増殖はBAP0.5ミリグラム/l、NAA0.05ミリグラム/lを添加したWPM培地が適していた。この培地で1ヵ月毎に継代培養することにより1ヵ月当り約3.5倍の増殖率を示した。

(6)伸長したシュートの発根に適した方法を調べたところ、IBA、NAAを添加した1月2日BTMでは、IBA 0.3MG/l、NAA0.2ミリグラム/lの添加が優れていた。シュートの切り口を0.0025%IBA水溶液で浸漬処理する方法では、処理時間1分が、また、同濃度のIBA水溶液へのべンレート、8-キノリノールの添加後、ホルモンフリ一の1月2日BTM培地にさしつける方法が有効であった。クロロゲン酸、キトサンの添加はそれぞれ0.25ミリグラム/lの添加が早期の発根に極めて有効であった。

(7)発根支持体の種類ではウレタンで顕著な効果が認められ、寒天培地を大きく上回った。発根率、及び発根促進剤の効果は、個体間差がみられたが、ルチエースが最も安定した効果を示した。その他、シュート切り口への0.0025%IBA水溶液での発根促進法、及び0.1%硝酸銀寒天培地での前処理法がシュ-卜の発根に効果的であった。

(8)順化
発根した幼植物体をバーミキュライト、パーライトを混合したポットに移し、水を張った透明の蓋の付いたプラスチックケースに入れる方法で順化を行った。約1ヵ月後、蓋の一部をわずかにずらし、さらに10日後温室内に移した。順化はポットに移植後およそ40日で完了した。

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