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更新日:2018年1月1日
~いばらきの日本酒~豊かな自然と水源に恵まれた関東屈指の酒処である茨城県。 今回は、「全国新酒鑑評会」((独)酒類想像研究所・日本酒造組合中央会共催)で金賞に輝いた酒蔵の一つである結城酒造株式会社(結城市)の酒造りと、酒造りの技術支援などを行っている県工業技術センター(茨城町)の取り組みを紹介します。 |
金賞を受賞した酒 ふくよかな味わいや華やかな香りが特徴。 |
結城酒造株式会社は、江戸時代に創業した400年以上もの歴史ある酒蔵です。国の有形文化財にも
登録されている酒蔵には、取材日の朝も、酒米を蒸す甘く香ばしい匂いが立ち込めていました。
「口当たり優しく、ふくよかな味わい」を目指して酒造りをしているのは、浦里昌明社長の妻であり、杜氏でもある美智子さん。結婚するまで酒造りに携わったことはなく、素人だった美智子さんでしたが、全国のおいしい日本酒を飲み比べていくうちに、その奥深さに興味を持ったそうです。
一方で、酒造りの手伝いをしていく中で、数々の疑問が出てきたそうです。そのため、県工業技術センターでの3カ月にわたる座学と実習(清酒製造研修)で基本となる知識を学んだと言います。
美智子さんは「同センター職員の武田文宣さんに、研修が終わった後も毎日のように相談に乗ってもらいました。麹造りやもろみ発酵など各種工程の温度や時間を試行錯誤しながら調整し、皆さんに『おいしい』と言っていただける日本酒を造ることができるようになりました」と顔をほころばせます。昌明社長は「美智子の酒造りに対する情熱や、ひたむきに勉強する姿勢を尊敬しています。これからも二人三脚で、こだわった酒造りをしていきたいです」と語っていました。
右:『酒縁』のおかげでここまで頑張れたと話す杜氏の浦里美智子さん 左上:酒米を蒸す甘く香ばしい匂いが酒蔵に立ち込めます。 左下:米と麹と水を3回に分けて仕込み(三段仕込み)、約30日間発酵させます。 毎朝、仕込んだもろみを櫂で混ぜて発酵具合を確認します。 |
「酒造りは素人だった私が前に進めたのは、助けてくださる方々がいたからです。武田さんをはじめ、おいしい酒に欠かせない酒米を作ってくれる農家さんや酒販店の皆さんに感謝しています」と、酒を通して結ばれた”ご縁〞があったからここまで頑張れたと振り返る美智子さん。
そして酒造りの難しさについては、「生きている酵母菌などを相手にするため、繊細な作業の連続です。11月から4月の仕込みの季節は、夜中も2時間おきに麹室に行き、温度を管理します。少しの温度の違いでも、日本酒の味が変わってしまうからです。『元気に育ってね』などと話し掛けながら、自分の子どもと接するように、毎日向き合っているんですよ」と教えてくれました。
愛情をそそぎ、丹精込めて造った日本酒。美智子さんは「人と人、人と街を結んでいく存在になって欲しい」と語ってくれました。
酒蔵に対して、酒造りの技術支援などを行っている県工業技術センター食品バイオ部門主任研究員の武田文宣さんは、11年にわたり日本酒の醸造や研究を続けています。
武田さんは、「一昔前は、岩手などからの季節雇用の杜氏が多かったのですが、杜氏の高齢化や後継者不足の問題などで、酒蔵が自ら杜氏の役割を果たし、日本酒を造らなくてはならなくなりました。そのため、酒造りの技術や人材育成などの問題を抱える蔵元が多くなってしまい、平成25年度に『清酒製造技術研究会』を立ち上げました。きき酒訓練や試験醸造、県外視察といった勉強会を毎年10回以上、蔵元に参加を呼びかけて実施しています」とセンターの取り組みを語ってくれました。
また、「勉強会では、酒蔵同士の『横のネットワーク』ができて情報交換が活発になり、みんなで『いばらきの日本酒』を盛り上げていこうという『意識改革』にもつながりました。酒蔵の味を引き出すのは、蔵人の技と思いです。酒質は、努力を裏切りません」と、技術だけでなく、蔵人の思いも味や風味の決め手になると、武田さんは熱く語ってくれました。
モノづくりは「ヒトづくり」と言うように、こうした県のバックアップが、いばらきの日本酒の発展を支えてきたと感じました。
きき酒をする武田文宣さん |
清酒製造研修で麹造り(床揉み)をする蔵人たち |
自然の恵みと蔵人の技と思いが込められた日本酒には、それぞれに個性があります。自分好みの日本酒を見つけて、自分好みの酒器で味わえば、日常に彩りが生まれることでしょう。
新酒がおいしいこれからの季節、いばらきの日本酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。
いばらき女性特派員三次諒子
酒造名 | 代表銘柄 | 電話番号 | |
---|---|---|---|
1.合資会社瀧田酒造店(水戸市) | 三ツ扇 | 029(221)2434 | |
2.吉久保酒造株式会社(水戸市) | 一品 | 029(224)4111 | |
3.株式会社月の井酒造店(大洗町) | 月の井 | 029(266)2168 | |
4.須藤本家株式会社(笠間市) | 響乃譽 | 0296(77)0152 | |
5.株式会社笹目宗兵衛商店(笠間市) | 二波山松緑 | 0296(72)0021 | |
6.武藤酒類醸造株式会社(笠間市) | 東海 | 0296(72)0008 | |
7.磯蔵酒造有限会社(笠間市) | 稲里 | 0296(74)2002 | |
8.有限会社堀川酒造店(桜川市) | 桜川 | 0296(75)2007 | |
9.明利酒類株式会社(水戸市) | 副将軍 | 029(247)6111 | |
10.岡部合名会社(常陸太田市) | 松盛 | 0294(74)2171 | |
11.合資会社剛烈富永酒造店(常陸太田市) | 剛烈 | 0294(76)2007 | |
12.檜山酒造株式会社(常陸太田市) | 千姫 | 0294(78)0008 | |
13.株式会社家久長本店(大子町) | 家久長 | 0295(72)0076 | |
14.木内酒造合資会社(那珂市) | 菊盛 | 029(298)0105 | |
15.根本酒造株式会社(常陸大宮市) | 久慈の山 | 0295(57)2211 | |
16.合資会社井坂酒造店(常陸太田市) | 日乃出鶴 | 0294(82)2006 | |
17.太田銘醸株式会社(常陸太田市) | 富久酔 | 0294(85)1100 | |
18.嶋﨑酒造株式会社(日立市) | 恵泉 | 0294(33)0025 | |
19.森島酒造株式会社(日立市) | 大観 | 0294(43)5334 | |
20.株式会社宏和商工(日立市) | 二人舞台 | 0294(39)4311 | |
21.合資会社椎名酒造店(日立市) | 富久心 | 0294(39)2041 | |
22.遠峰酒造株式会社(潮来市) | 鹿島誉 | 0299(62)2289 | |
23.愛友酒造株式会社 | 愛友 | 0299(62)2234 | |
24.有限会社竹乃葉酒造(行方) | 東竹乃葉 | 0299(73)2103 | |
25.株式会社岡田酒造店(龍ケ崎市) | 福の花 | 0297(62)0004 | |
26.金門酒造株式会社(取手市) | 金門 | 0297(72)0103 | |
27.株式会社田中酒造店(取手市) | 君萬代 | 0297(72)0011 | |
28.藤田酒造店(石岡市) | 富士泉 | 0299(26)2582 | |
29.合資会社廣瀬商店 | 白菊 | 0299(26)4131 | |
30.府中誉株式会社(石岡市) | 渡舟 | 0299(23)0233 | |
31.稲葉酒造(つくば市) | 男女川 | 029(866)0020 | |
32.株式会社廣瀬倉庫(石岡市) | 白菊 | 0299(26)4131 | |
33.合資会社浦里酒造店(つくば市) | 霧筑波 | 029(865)0032 | |
34.石岡酒造株式会社(石岡市) | 筑波 | 0299(26)3331 | |
35.白菊酒造株式会社(石岡市) | 白菊 | 0299(26)4131 | |
36.来福酒造株式会社(筑西市) | 来福 | 0296(52)2448 | |
37.村井醸造株式会社(桜川市) | 公明 | 0296(55)0005 | |
38.西岡本店(桜川市) | 花の井 | 0296(55)1171 | |
39.株式会社武勇(結城市) | 武勇 | 0296(33)3343 | |
40.株式会社山中酒造店(常総市) | 一人娘 | 0297(42)2004 | |
41.野村醸造株式会社(常総市) | 紬美人 | 0297(42)2056 | |
42.株式会社竹村酒造店(常総市) | 京の夢 | 0297(23)1155 | |
43.結城酒造株式会社(結城市) | 結ゆい | 0296(33)3344 | |
44.青木酒造株式会社(古河市) | 御慶事 | 0280(32)5678 | |
45.萩原酒造株式会社(境町) | 徳正宗 | 0280(87)0746 | |
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※仕込みの時期など、見学不可の場合もありますので、必ず事前に電話でご確認ください。
全工程が手作業で行われる「結城紬」。技術伝承者による「糸つむぎ・絣くくり・地機織り」の主要な3工程は、1956(昭和31)年に「国重要無形文化財」に指定され、2010(平成22)年には「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。
軽くて温かく、着心地が良い結城紬は、着こむほどにしなやかで肌になじみ、新たな風合いが生まれ、魅力を増していきます。
結城市では、「ふらり結城紬着心地体験」を行っています。酒蔵を含めた観光モデルコースもありますので、結城紬を着て、情緒あふれる街並みを散策してみませんか。
「奥順見世蔵」前を散策
「Coworking&Café yuinowa(ゆいのわ)」で休憩
貸出場所:結城市民情報センター1階テナントゆうき紬着付け処「着楽」
実施日時:土曜・日曜10時~15時
料金:男性2,500円、女性2,000円(着付け料金を含む)
結城市商工観光課☎0296(32)1111
笠間焼の誕生は、江戸時代の安永年間(1772~1781年)にさかのぼり、信楽(現在の滋賀県)の陶工・長右衛門の指導で築窯したと言われています。江戸時代からの伝統を受け継ぎながらも、それにとらわれない自由な作風が特徴。
お気に入りの笠間焼の酒器を見つけて、日本酒を楽しんでみませんか。
左上:磯部幸克・作右上:佐藤泰正・作
左下:酒井芳樹・作右下:渡辺信雄・作
「ピュア茨城」は、2003(平成15)年に誕生した”純茨城のお酒”です。
酒米は、キレがあり、すっきりしたタイプの本県初のオリジナル酒造好適米「ひたち錦」。酵母も本県産です。
酒米と酵母は同じですが、各蔵人の技で個性豊かな味わいを楽しむことができます。今年度は23蔵で造っています。ぜひ飲み比べてみてください。
県産業技術課☎029(301)3584
県工業技術センター☎029(293)7497
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